EXHIBITIONS

添田奈那 I’m fine

2023.2.17 [fri] – 3.11 [sat]

YUKIKOMIZUTANI

添田奈那「世界中があなたの敵になっても」oil on canvas, 1167×1820mm, 2023

怒りのパワーは底知れない。私はずっと、何かを主張するために「怒り」は燃料として必要だと考えてきた。でも、そろそろ怒った先を考えなくちゃいけない・・・。私が、私の周りの大切な人たちが出来るだけ傷つかずに生きるにはどうすればいいんだろう。そんなことを考えながら制作した。
― 添田奈那

 

 

YUKIKOMIZUTANIでは、2月17日から3月11日まで、添田奈那による個展『Iʼm fine』を開催します。本展覧会ではペインティング、ドローイングの新作を発表致します。

 

添田奈那はこれまで、アジア諸国の市場で売られるチープな玩具や、街で散見される作者不明のキャラクターにインスピレーションを受けた作品を発表してきました。メインカルチャーはもちろんのこと、サブカルチャーからすらも外れたそれらのキャラクターを、自らも含めた”声なき弱者”の怒りを代弁させるのに、最も適したモチーフとして表現してきました。

 

キャラクターの世界には、出自や消費のされ方を根拠とした、ある種の階層構造が存在していると添田は考察します。その頂点には、アメリカのポップカルチャーから生まれた国際的に有名なキャラクターが君臨し、それらの一次的なキャラクター群のフォロワーが下層の構造を形成していきます。添田が焦点を当てるのは、その序列の最下層にいる有象無象のキャラクターたちです。

 

露店にならべられた有名キャラクターの非公式で表面的なコピーや、街角の看板に唐突に登場する記号としての意味しか持たないキャラクターなど、多くの人にとって興味の対象にすらならないものに、権威に従属する弱者や社会に取りこぼされた人々の姿を重ねています。添田はキャラクターを通して抑圧された感情を解放し、赤裸々な意思表明を行います。それらは既存の構造への反抗であり、最下層からの革命宣言なのです。

 

制作において添田は、世界中で見つけたキャラクターを分解し、感性のままに再構築するという独自の手法を用いて、チープさと匿名性を強調しています。半ばランダムに姿形を生成する方法は、実際に添田が目にした表面的で粗雑なキャラクターの生産を踏襲しています。そしてそれらを平面的に配置する画面構成には、チープさへの徹底的な敬意と礼賛が現れています。

 

「Iʼm fine」と名付けられた本展覧会では、怒りに身をゆだねた気任せな過去の表現から一歩前進し、激しい情動と社会性の調和を模索しています。睨めつける視線は、依然として内的な怒りや叫びを感じさせますが、淡く彩られた背景や、ぎこちないながらも他者への歩みよりを感じさせる表情が和解の兆しを想起させます。

 

 

添田奈那/NANA SOEDA
1994年生まれ。日本・ロンドンでアートを学ぶ。アジアで売るオモチャや看板、ガラクタから影響を受け、「チープ」らしさを愛おしく感じるかたわら、社会にまつわる理不尽な事柄に憤りや悲しみを感じ、それらをテーマに作品を制作している。